雑記:会議ログ「MOBAから始まる組織論」

投稿日 2022年1月19日 最終更新日 2022年1月20日

 今回は、とあるディスコ会議において「私が論じた内容」を抜粋してまとめてみるというテストを行いました。最近更新頻度が少なかった雑記タイプの記事となります。今回の内容は議論というよりは私の持論を展開する話題となっていたため、インタビュー調で展開してみます。


私は対人ゲームはほとんどプレイしない方だけど、ポケモンユナイトで初めてまともにMOBAをやって思ったのは、野良ではなく固定メンバーでまともに戦うなら、明確なリーダーを立てておくことが大切なんじゃないかなってこと。

対人ゲームに限らず、複数人が連携して何かを行うときには必ず命令権を持つリーダーを一時的でもいいから決めてしまって、その人から出た「指示」を軽視せず、連携して行動できるシステムで動くことは非常に大切なことだと思ってる。これ自体は組織やチームの大小にかかわらず、集団で何らかの取り組みを行う場合の基本でもあるね。

という内容が、今回のお話のベースとなる内容をまとめたものです。
全部書き記してしまうと本当にキリがなくなるので…。



組織の規模が大きくなってくると、現場レベルの知識を持っている必要は必ずしもなくなってくる。例えばゲーム開発会社の社長が、ゲーム用AIのプログラミング技術を持っている必要はない、みたいなね。

実際、世の中の企業では「雇われ社長」とでもいうべき経営のプロが、依頼してきた企業の業界に関する予備知識など一切ないままに業績を大きく伸ばすなんて話もあるくらいだしね。


ー経営者が全部完璧に理解してなきゃいけないなら、派遣店長とかないんだね。

eスポーツ(対人ゲーム)のチームのような小さな組織だと、自力で情報収集できなければメンバーから仕入れても良いから、ある程度納得してもらえる指示を出せる知見は持っておかないとダメだけどね。


―大きくなるほど動く駒が増えるから、組織の規模に比例して専門性は薄れていく感じ。

そうそう。ただし、情報収集、分析などはリーダー以外が受け持った方がはかどると思う


―企業によってはアナリティクス担当とかが居るくらいだから、ほんとにそれは思う。


軍隊でも、ある程度の人数を指揮統率できるサブリーダーの人員が必要になるよね


—なるほど。そういう風に考えるとゲームのIGLってなかなかブラックな立場なんだなって思うし。


そうなるともう、最高指揮官の任務は各リーダーの統率や、参謀本部の意見を統括すること、くらいになるよね。もっと下部の構成員に対してはせいぜい檄を飛ばすくらい。


—ちゃんと情報持ってきてもらって、ちゃんと理解して方針決めて行ってこい。何もわからずに言うだけだと現場が混乱するけど、ちゃんと最初の士気だけ飛ばしてもらって、あとは任せたが一番理想なのかな。まあ時と場合によるよね、が出てくると最終結論になってしまうんだけど。


そこでナポレオン・ボナパルトが負けた理由が出てくるわけ。「大体こんな感じで自己判断してやってね」ができないと、大局は動かせなくなる。「余の赴くところ必ず勝つ」を実現しながら、「余の赴かざるところ必ず敗れる」という事態が現出する。

可能性に対する行動をプログラム化するのも1つの手だけど、さっき言ったように全ての可能性とそれに対する手順をを考えるのは、一流のプログラマーでも不可能だからね。


—自分が実際に前に出ちゃうと自分のところで手一杯で、自分のいる場所以外の戦線が崩壊する。というか宇宙に目があるわけでもない時代だから、端から端まで見渡せるわけでもないのに無理をしすぎたと。


ナポレオンはナポレオンでもっと古い命令系統に対して打ち勝ってきた人なんだけど、戦線が拡大するにつれてもっと転換が必要になっていたというわけだね。


—大将は後ろで構えてろって言われる理由の最たる例なわけだ。


人命の価値は平等ではないという残酷な現実でもある。


—確かに。軽んじてというよりはどちらがより重いか、どちらが欠けると崩壊するかを取捨選択しなければいけないっていう方面の不平等。


不用意に前衛に出るのは確かに良くないけど、これに関しては時と場合によって効果的でもあるけどね。

まあ指揮系統論に戻ると、「何でその行動を選択するのか」を理解させ続けることが一番大切っていうことが、ナポレオンが超えられなかった限界の脱却につながるわけ。「適当に敵部隊を引き付けておいてくれ」とか指示するだけで、本体を各個撃破するとかね。


これは北方謙三さんの『三国志』にあったシーンなんだけど、曹操配下の程昱が袁紹軍との戦いにおいて十面埋伏の計(敵の進軍路の物陰に兵をひそめる「伏兵」を何重にも配備して挟み撃ちにする戦法)を提案したところ、実戦指揮にもたずさわることになって。そのとき程昱が出した指示が「敵をおびき寄せる部隊は10人中3人が倒れたころに後退しろ(詳細な数字や文言はうろ覚え)」というようなものだったんだよね

で、それを見た曹操が、ああ文官の考え方だなあって。自分が指示する場合は「適当に戦って負けたふりをして逃げろ」みたいに言うよなあって。そういうくだりがある。

この指揮担当自体は程昱の軍師としての立場を確立させるためのものだったわけで、戦後程昱は文官に指揮をとらせないよう改めて提言するわけだけど。そういう話は抜きにして、「大局を見渡して指揮を執る者にはある程度の大雑把さが必要」ということをよく表している話だと思って記憶に残ってる。


—あんまり固く決めすぎると不意な出来事に対して指示の遂行がされなくて、追加で指示を出さないといけなくなるとかがあり得る点で、雑さが欲しい感じ。


通信が発達していなかった前近代では特にね。そもそも追加の指示が間に合わないから。現場の指揮官が不測の事態に対応できる能力とともに、何を重視して対応すべきかというマクロな目的、目標をしっかり伝達しておく必要があるといった感じ。


号令戦術に対して命令戦術で勝ったナポレオン
命令戦術に対して訓令戦術で勝った連合軍

ワーテルローの戦いにおける連合軍は要するに、「衆」による有機的な連携が(結果として)取れたために勝てたと言えるね。


一方のナポレオン軍は、一度打ち破ったプロイセン軍に対する追撃をグルーシー元帥率いる一軍がを遂行したものの捕捉できず、主戦場から遠く離れてしまった。その後主戦場からの砲声が聞こえたときに部下から合流するよう意見されても、以前の命令を優先して主戦場から離れた地域で敵軍と交戦を始めてしまう。しかもナポレオンが出した合流命令の伝令は道に迷ってしまい、グルーシーのもとに到着できなかった。

そのためグルーシー率いる軍勢は、ワーテルローの戦いに最後まで参戦することができなかった。さながら要件定義から外れてしまったAIのように、木偶の坊と化してしまったわけ。

作戦の基本方針が周知徹底されていなかったこともあり臨機応変な行動がとれず、さらに伝令がたどり着けず合流命令を受信することもできなかったため、「次の行動指針」に移ることができないまま無為な追撃、戦闘を続けてしまった。

一方、捕捉を免れたプロイセン軍は主戦場に続々と到着。決戦を勝利へと導くことになった。


—なるほどなあ。


作戦目標や目的と、そのために必要なことは伝えるけど、現場でできた細かいことは「目的のための最善の行動をとれ」っていう指揮系統のあり方が求められる時代になったということ。


—指揮するものが大きくなればなるほど、事細かく伝えて指示できる機会が減るから、最終的には「いいかんじに臨機応変にやってくれ」が残るわけね。もちろん骨子というか、こういう感じで行きますっていう行動規範は欲しいけど。


そのために少なくともサブリーダーは、戦略的意志を理解できて戦術的判断を行える能力が求められる。そして最高指揮官は、作戦目的とその必要なエッセンスを部下に徹底できる必要がある。

例えば私がアラド戦記で建てている固定レイドでは、攻略の流れや方針を把握してもらったら、もう指示自体ほとんど出さなくて済むようなシステムでやってる。何らかのイレギュラーが発生しない限りは。


—なるほど。下位の指揮官やサブリーダーには大雑把な流れを確実に理解してもらうのと、その把握した流れの中から、その時に合ったやり方を即座に考えてもらえる必要があると。確かに両方揃っていないと大きな規模の指揮は立ち行かない。

★コラム:ナポレオンと偽ギュスターヴ
 これはかなり個人的な見解ですが、ナポレオン・ボナパルトと
テレビゲーム「サガフロンティア2」の偽ギュスターブの2人は
類似した傾向を持っていると思っています。

 特にサガフロ2における「サウスマウンドトップの戦い」は
ワーテルローの戦いをモチーフにしたのではないかと思えるほど、
その本質に共通点が見受けられます。

●ワーテルローにおいてグルーシー元帥は敵部隊追撃命令を受け、捕捉失敗後も進軍を続けた。
●サウスマウンドトップにおいてエーデルリッターのボルスは禁止されていた追撃を敢行した。

例えば上記2名の行動は命令違反の有無こそ異なっているものの、
「追撃にこだわりすぎた結果、主戦場の戦いに参加できず敗北を招いた」
という点が極めて類似しています。


●将帥1人の才覚に依存しすぎたナポレオン軍と偽ギュス軍。
●寄せ集めだが勝利目標のため自律的に動いた連合軍。

上記2つの特徴も、細かい事情をさておけば類似していると考えられるでしょう。
戦争結果が時代に1つのパラダイムシフトをもたらした点も共通しています。

もちろん、グルーシー元帥の失敗は指揮、命令系統の問題であるのに対し
ボルスの失敗は単純な命令違反であったため、
換骨奪胎としても非常に簡易化された問題としての描写になります。
しかし後者はあくまでテレビゲームのストーリーなので、
デフォルメされた分かりやすい話の方が適していると言えます。

これも北方三国志の例になっちゃうんだけど。長坂の戦いで曹操から劉備軍の追撃と江陵の奪取を命じられた張遼が質問するわけ。「劉備の首か、江陵かの2択になったとき、どちらを優先しますか」って。これ、作戦目的とそのエッセンスのすごく良い例だと思ってる。


作戦目標:劉備の抹殺&江陵の奪取
エッセンス:どちらか片方を諦めざるを得ない場合の優先順位


大戦略方針の下に小さな戦略目標、さらに戦術目標がそれぞれ設定されて、下位の目標が上位の目標に反する場合、下位の方に修正を加えるという意識が大切になる。場合によっては「戦略目標に反するくらいなら負けた方がマシ」ってことまである。



―目的のための行動がより困難になったとき、征くか退くか、目的へのルートをどう変更するかがサブリーダーに求められるわけだね。

そしてそのための最低限のルールも設けられている必要がある。


―その変更を円滑にできるように、これをこなしてほしいというしっかりした目標と、その目標のために何が必要であるかを確実に伝えるのがリーダーに求められると。


義務と権限、権利を明確に区別する形だね。


―なるほど。


そういう意味で、「どっしり構える」という言い方は間違ってない。絶対無敵の最適解なんて存在しない以上、仮に70点くらいの戦略戦術であってもいいから意志徹底されていることが何より大切。これは対人ゲームでも同じこと。

まあ軍事の場合は敗北が取り返しのつかないものになり得る以上、一概には言えないけど。確率論として明確に期待値があがるということだね。

ーなるほど。


命令違反が厳罰に処せられるべき理由がそこにある。そしてそんなことは紀元前数百年の時代から分かってる人は分かってた。「勝ったからいいじゃん」じゃないんだよね。


ー運じゃなく勝ちを拾えそうな戦いでも、運次第で「負けるよりひどいこと」になる可能性があるんだから、ちゃんと言われたことには従いましょうっていう。どんな作戦にも絶対的な正解がないからこそ、命令違反なんてことをされると、目標に対するリーダーの作戦とサブリーダーのプランニングが全部だめになるわけだから。

時と場合によっては立て直しすら不可能ですになって、それで運良く勝ったとしても…っていう話になるのね。


これは軍記物の演出で史実とは異なるけど、賤ケ岳の戦いがそれにあたるかな。羽柴秀吉がいない隙に砦を攻めるよう提案した佐久間盛政は柴田勝家の制止を振り切って突撃し、占領に成功する。その後、早く撤退しろという命令も無視して居座った結果、強行軍で戻ってきた秀吉に敗北して全軍崩壊、勝家の勢力そのものが滅亡してしまった。

ただもう一度いうけど、史実とは異なるからね。史実の場合、最大の敗因は前田利家の敵前逃亡(実質的な裏切り)によって防衛ラインに穴が開いたせいで戦線崩壊って言われてるね。とはいえ、物語としても命令違反の招く結果としては良い例になってる。


ーなるほど。


MOBAでいうと、目先のキル稼ぎにとらわれすぎてマクロを見失い、オブジェクトや拠点を取られるって感じかな。


ーその後どうするかを考えておかないと。まあ何でもそうだよね。今ここで打開しないと、利益が取れないと後がなくなるっていう追い詰められた状況じゃないなら、ここで利を取って先に進んで後に引けなくなる可能性だったり、その利を受け取った後に受ける損害の可能性を考えておけると、より全体が安定することにつながる。

そこで先走らないようにするための一番簡単な鎖が、リーダーとサブリーダーからの作戦と命令って感じなんだね。


命令戦術と訓令戦術はありていにいうと、命令はターン制の疑似RTA(リアルタイムシミュレーション)。1か月に1回命令出せたりするタイプ。そして訓令は方針指示制のAIシミュレーションって感じかな。

後者はAIの質を上げればいい、つまり部下やメンバーを教育した上で方針を明確にするって感じ。

前者は細かく指示を出せる代わりに、例えば敵城攻撃のために部隊を出して、その直後に本拠を別の敵に攻められて危険になったとしても、次のターンまでは撤退指示を出せない、とかね。


ーなるほど。あー、命令させろでコマンドを入れるのと、作戦指示でAIに任せるっていうノリと似てる感じなんだ。


ドラクエ風に言うと、10ターン先まで指示を出しておけるのが命令戦術って感じかな。その代わり後から変更することができない。HPが少なくなった時に即座に対応できるのはAIの方。


ーなるほど。その場に応じてスキルを撃ってくれる代りに、本人のAIがある程度学習していてくれないとザラキを撃ちまくるシステムと、相手の行動パターンが分かっていれば完封できる代わりに、行動パターンが想定を外れると一気に崩れるシステムの違いって考えると、両立できるようにしておくべきっていうのは分かる。


人間のさりげないチート性はそこにあるともいえるね。自律思考型AIという領域に落ち着くことができるならね。

だからティルトをまき散らしているだけのプレイヤーは人間であることのメリットを捨て去ってしまってると言える。
※ティルト:ゲーム進行や味方の動きが自分の思い通りにならないと協調性を失ったり、試合を放棄したりするプレイヤーの事。

リーダーは方針指示や臨機応変な大目標追加。部下は報告、連絡、相談をしっかり行い、指示が出たら必ず従う。サブリーダーはその間のパイプだね。

もちろん意見をすることも大切だけど、指揮系統論で語るとそうなる。少なくとも目の前の敵とやりあっている最中に「それダメでしょ」「何やってんの」って喧嘩しあってる暇はないってことだね。


 以上で今回の議題は終わりです。この記事は「吹き出しを使った会話記事」と「議論ログをまとめた記事」、さらに「ブロックエディタによる記事編集」のテストとして編集してみました。

 前者2つはそれなりやれたかなという感想だけど、ブロックエディタはどうしてもクラシックの方が圧倒的に便利と思ってしまうのが、細かいレイアウトを思い通りにしたいライターな私なのでした。完全に思い通りのレイアウトはどうしても実現させてくれない。