【ゲームレビュー】ペルソナ5 ザ・ロイヤル(前編:シナリオ途中の雑感と評価)

投稿日 2023年1月29日 最終更新日 2023年1月29日

 2023年に入ってからプレイしていた本作のプレイ途中の感想とまとめます。本当は、プレイ中にはある程度まとめておく程度にして、クリア後に残りを追記して一気に投稿しようと思ったのですが、前編後編に分けてしまおうということにしました。

 プレイ後の雑感はネタバレするかどうかの問題もあるし、SO6みたいに考察することになるかもしれないし、基本的なプレイ感はもう大体わかったかな、という感じで。

※オープニングで主人公が捕まった描写の時間軸まで物語が進んだ状態でまとめたものです。ここまでとこれ以降で内容や感想が大きく変わりそうなので。


ストーリー前半レビュー
概要
 主人公とその仲間たちは「怪盗団」として、司法が裁けない悪人を懲らしめるダークヒーロー。悪人の認知世界(精神風景のようなもの)である異世界「パレス」に侵入し、その欲望が凝縮された「オタカラ」を奪取することでその悪人を「改心」させていきます。
※「パレス」は4における「マヨナカテレビ」のような位置づけ。ダンジョン攻略の対象。

 理不尽なオトナのせいで社会のはぐれ者となり居場所を失っていた若者たちが、怪盗団を自分の新たな「居場所」としつつ、理不尽なオトナたちに鉄槌を下していく。こう書くと、理不尽のあふれる現代社会にうんざりしている人にとっての清涼剤となりそうですが、そう一筋縄ではいかない。

 怪盗団の行っていることは、異世界を知らない世間の人々にとっては「手口不明の犯罪者」にすぎません。また、司法の枠組みから外れて「私刑」を行うことは、現代社会において基本的にタブーとされています。

 そういった中での「正義のためなら手段を択ばない」という在り方は、「社会のルールに反するやり方には肯定できない」「社会の枠組みに反する行為は絶対的に悪」といったさまざまな見解と戦っていくことにもなるからです。この手の哲学的な話題は目新しいものではないですが、ファンタジー風味のストーリーと組み合わさることで面白さを演出しています

 彼らは当初、各々が世の中のさまざまな理不尽による被害者となったことの反動から、純粋に世直しの気持ちで行動していたわけですが、世間の喝采を得るにつれてその行動規範にブレが生じ始めたり、その裏で暗躍する影が見え始めたりして…。というところがネタバレなしの限度でしょうか。

 仲間を始めとする各登場人物との交流を深めるフェーズも、1つのサブシナリオとしてそれぞれ見どころだと思います。メインストーリー中の掛け合いもなかなかに良いもの。ストーリー目当てでこのゲームをプレイするのは普通にアリだと思います。まあ、一部の展開が論理的にはメチャクチャだったりするのは愛嬌なのかどうなのか。

 ただし、後述する内容の関係もあって「クリアまでプレイ」する前提でやっと面白さを得られるストーリー構成だろうと思います。この文章を書いている時点では主人公が全く報われていませんからね。

 

リアリティによるしんどさも
 ストーリーは概ね出来が良いと思いますが、プレイしていて単純な楽しさ、面白さを求めるという観点からすると、読み手の感覚としては結構しんどいところがあります。

 その原因としてはもちろん、ボスである悪人たちの極悪非道な精神のあり方も十分嫌悪感をもよおすものではあります。しかし、そんなことよりも、世間の声として表現される一般大衆のあり方があまりにリアルで、その生々しく身勝手で無責任な発言の数々に、おどろおどろしいまでの醜さと気分の悪さを感じることが最大の要因です

 ネームレス化した群衆という概念の一部としての人々は、あらゆるニュースや事件事故をセンセーショナルに「消費」することを娯楽とします。また匿名で一切の責任を持たずに発言できてしまうことから、昨今のインターネット社会においての誹謗中傷を始めとする「何言っても大丈夫」という空気感が濃厚

 大衆こそが最大のモンスターというのは、20世紀における戦争の歴史を見てもあながち間違いではありませんからね。そうした「群衆の一部」としての個人たちによる言葉の集団暴行のあり様をリアルに描けているがために、読み手(聞き手)にとっての不快感もまたリアルなものになるという感じですね。

 つまり、作品としてはこの要素も出来の良さの1つとして捉えるべきところといえます。製作者目線では意図した描写が極めて効果的に作用しているということなので誉め言葉(だけど娯楽としては結構しんどいところもある)という評価に落ち着くかな。この辺はP4とはかなり異なる感覚(主観)。単なるストレス発散としてプレイする感じではないかも

 流石に最終的にはこうした不合理感もある程度は回収してくれるとは思っていますけどね。この文章を書く直前の展開はなかなかのカタルシスでしたし、1つの大きな答え合わせができて「面白くなってきた」と感じさせられました。あとは今後主人公がしっかり報われてくれるのか、あるいは最後まで理不尽に見舞われるのか。前者であることを期待したい

 

戦闘について
 従来のペルソナと同じく、敵の弱点を突く、状態異常を駆使するなどの基本的な工夫があって初めて適切なバランスで戦闘を行えます。レベルを上げて物理で殴る、というよりは、ある程度考えて戦いたい人に向いたゲームです。とはいっても別に難しくはないですが。あとは各ダンジョンボスのギミックが個性的。

 常に面倒な戦闘を強いられるかというとそうでもなく、例えばある仲間との友好度をアップさせることで、10レベル以上差のある敵を戦闘なしで倒すことができるスキルが得られるため、戦う価値も無い相手と延々駆け引きをする必要は無くて便利。

 リメイクである今作では最初から強力なペルソナを召喚することができますが、私は「主人公が達したレベルの特典ペルソナだけ召喚」というルールでプレイしました。特典ペルソナは一部を除けば極端に強いというわけでもないため、結果的に強いバフを持った超低レベルの1体しかまともに使わなかったのですが(具体的に言うとネオ・カデンツァ持ちのオルフェウス(賊神)を高レベルまで育てました)。もし戦闘バランスを崩壊させたいなら最初から強力な特典ペルソナを使えば良いんじゃないかな

 ダンジョン探索や戦闘にガッツリ専念したい人には少し物足りないかもしれません。メインダンジョンと言えるパレスは10個に満たないですし、ダンジョン探索は基本的に自由行動フェーズの1ターンを使用して入場することになるため、宿屋に止まりつつレベルアップしまくる、みたいなプレイにはあまりそぐわない感じです(不可能ではないけど)。

 ただ、パレス1つ1つのボリュームは半端ないです。何時間もかかります(例えば終盤のパレスはオタカラルート確保まで4時間かかったりしました)。あとはダンジョンギミック(謎解きというには少し弱い程度のアレコレ)が極めて豊富なので、一度切りのクリアなら楽しめた方かな。2回目はやりたいと思いませんが。

 サブシナリオ消化のためのメメントスというダンジョン(最終的にはシナリオの本筋に関わってくる)もあるので、ダンジョン自体が少なすぎるということはないですけどね。現実社会の裏側にある異世界という設定上、フィールドを探索してダンジョンを見つけて~みたいな感覚にはならず、ダンジョンが単独で存在する形になるため「冒険」という感じではないです。

 要は、P5における戦闘やダンジョン探索は、いくつかあるメインコンテンツの1つ、くらいに思うのがベターかもしれませんね。

 

利便性について
おおむね優秀なユーティリティ
 戦闘の項目でも少し触れましたが、低レベル雑魚はひき逃げで倒せるようになるし、現実世界でのマップ移動はどこでもワープレベルで即移動できるし、繰り返すのが面倒なプロセスを楽にしてくれるなどの利便性は高いゲームだと思います。他にも戦闘時に弱点攻撃を自動的に選んでくれるコマンドなどもあるし、比較的至れり尽くせりの部類ではないかな。

 UIも基本的に整っています。強いて言うならペルソナの切り替えや、今発生できるコープイベントがあいまいな時があるなど、一部やや不便と思うところもなくはない、程度かな? 

 

自由の名を借りた束縛
 日常の自由行動パートは基本的に、放課後or昼と夜の2ターンを1日に消化して、登場人物とのイベントやステータス上げなどの各種行動を自由に選択していくことになります。各ターンに1回しか時間を消費する行動を行えないため、優先度に応じた取捨選択が必須になります。

 しかし、重要な連続イベントの発生時期になるとこれが尋常じゃないくらい制限を受けることになります。連日の放課後や昼がイベントで消費される点については、ある程度やむを得ないかなというところはあります。しかし、イベント後の特に何もないはずの夜時間まで、外出しようとするとモルガナに止められ、ひどいときは一切の行動を放棄させられて「外出禁止」や「就寝」を強制されます。

 ゲームバランスを考慮してターン数を意識した部分もあるのかもしれませんが、「明日に備えて寝ようぜ(明日はこの時点で特別な用事などない)」という感じで20日くらい連続で自由行動がほとんどなくなってしまう状況が何度も起きてしまうのは、非常に強い「束縛感」を感じる要因となりました。P4のときはここまで明確な不自由は感じなかったような(昔すぎるのでやや曖昧ですが)。何より事前に分からないのが痛いですね

 たとえば、宝くじの当選日だから当落確認だけしてから寝よう、と思ってから、実際に確認できるまでにゲーム内時間で20日、実時間としては3時間経っていたりするのだから半端ない強制力です

 この何とも辛く感じてしまう束縛感はある意味、ゲームの世界観の反映なのかもしれないと思ったりもします(違うだろうけど)。主人公はベルベットルームにおいては「囚人」として「更生」に励んでいくわけですが、まさに現実世界における不自由さも「囚人」だなと(ちなみに彼が通い始める高校も読みは「シュージン」)。モルガナという存在が現実世界における「看守」のように見えてきます

 この辺りはプレイに支障をきたすほどの問題ではないですが、1つの感想として一応述べておきます。


まとめ 
 というわけで、緻密に練られた現代ファンタジーのお話を楽しみたい人には向いているゲームだと思います。ただし人間の醜い側面を前面に押し出す描写が多いので、楽しいお話を読みたい人には微妙かも。多数の登場人物についても丁寧なサブストーリーが用意されているので、シナリオこそが最大のメインコンテンツだと思います

 また、多少は頭を使ってRPGの戦闘を楽しみたい人にも合うかも。趣味人なら難易度を上げて楽しむこともできるし、そこまで難しいのを望まないなら低難易度や、リメイクならではの特典ペルソナも存在します。

 ゲームバランスはかなり整っている方だし、UIやシステム上の利便性も高い。何ていうか、ゲームを作品としてみると完成度の高い一級品であるのはP4同様だと思います。逆に言えば初代ペルソナみたいな「はっちゃけた」難易度ではないんですけどね。

※余談:ゲーム慣れしている人は、頻繁に利用するNPCに対してコマンドを選択する際に「セリフを無視して高速入力」すると思いますが、本ソフトのベルベットルームでこれを行うと「無礼な男ですね」「落ち着きがないですね」などと叱られます。