【レビュー】最近読んだ本のレビュー集

投稿日 2023年8月20日 最終更新日 2023年8月20日

 今年に入ってから読んだ本のレビューをいくつかまとめてみます。戦争ものから自己啓発物までいろいろと。


山崎雅弘 戦史ノート

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 近現代を中心とした古今東西の戦争や、軍事的要素を含んだ事件の経緯がまとめられている小冊子集。世界史における戦争などについての概観を知るには便利。地図が用いられていないので、本当に知識としての基本的な流れをざっと掴んでいく感じ。軍編成の詳細に割かれる字数が多かったり、細かい部分に関してはこだわりも多い。

 kindleアンリミテッドをこの書籍のために維持していましたが、結局普通に買うのより少し安い程度になってしまったくらいには全体のボリュームが大きい。

 

超訳 カーネギー 人を動かす(デール・カーネギー、弓場隆)

 人間という生き物とうまくやっていくための真理が分かりやすくまとめられている良著(※ただし「人間関係」が成立する対象に限る印象)。かかわる相手が向く方向を最低限調整することができる「人心操縦術」と言えなくもない(「他人はコントロールできない」が前提)。後述するジャンルにおける古典的教科書ともいえる。入口としてえは最適と言って良いレベルの具体的事例集

 私のように、人間という生き物の生態を意識的に観察し続けてきたり、脳科学、スピリチュアル、自己啓発系の知識を取り入れてきたりした人間にとってはどこかで聞いた話が多くなる。とはいえ個人的にも「うんうん、そうだよね(共感)」に終始したとはいえ、初心に立ち返ることはできた。

 

超訳 カーネギー 道は開ける(デール・カーネギー、弓場隆)

 「人を動かす」が対人関係に特化した内容であったのに対し、こちらは自己目的達成そのものに特化した内容と言えるか。前著同様、脳科学、スピリチュアル、自己啓発系の大本となる古典的教科書といえる。引き寄せの法則にオカルティックな内容が含まれる前の段階ともいえるか。

 注意すべき点があるとすれば、米国と日本の社会風土の違い。「努力が成果を生む」「成果を上げれば成功する」などといったアメリカならではの実力主義に基づいた内容も多いので、流動性が低く閉鎖的な日本社会に根付いた人にとっては一部の内容がしっくりこなくなる。とはいえ、それでも色あせることのない確かな真理が述べられていることも間違いない

 

ぜんぶ、すてれば(中野善壽)

 破天荒な伝説の経営者が、過去の体験談とともに生き方に関する持論を繰り広げていく書籍。しがらみの多い現代日本人にこれを丸ごと真似るのは難しいですが、それでもある種の引き寄せの極意の種が詰まっています。お話として読んでみるだけでも一興の価値はあるかも。

 

戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方(松村 劭)

 序盤は現代軍事に関する教科書的な内容。中盤からは戦術シミュレーション教本の様相を呈する。「期待外れかつ期待以上」といえるかも。前近代でも良いので戦史(歴史において発生した戦争の経緯などでOK)、または戦争に関する知見が教養程度にはある前提で読む本といえそう。

 私自身は当然のごとく実戦を知らないから、細かい正誤を断じることはできないけど内容としては面白い。「期待外れ」の部分に関しては、もう少し現代軍事学ならではの概念や用語を説明してほしかった。ほんの入り口だけだった。

 私としてはこれを説明してくれる書籍にまだ巡り合えていないのが残念。前近代の概念を現代風に言い換えただけのものも多いであろうことは承知しているものの、それでも現代軍事学ならではの要素に対する知見がなさすぎる。

 「期待以上」の部分に関しては、仮想の戦争におけるシミュレーションが思いのほか具体的、実践的であり、また読み物としてもそれなりにしっくりくる内容だったこと。また、小規模の部隊長と比較的大規模な戦闘団の指揮官という2つの視点から同じ戦争を見つめる構成も興味深い。

 

武田三代 信虎・信玄・勝頼の史実に迫る
真田三代 幸綱・昌幸・信繁の史実に迫る(平山優)

 当時の最新研究をもとに、武田氏や真田氏について詳述された良著。日本史の歴史研究は近年、主に書状の精査などによって著しい進展を見せ続けており、歴史好きは是非このような「一般向けに記された歴史研究に関する書籍」を読んでみると良いと思う。

 特に武田氏に関しては、高坂昌信⇒春日(香坂)虎綱、内藤昌豊⇒昌秀、真田幸隆⇒幸綱など、人名すら旧説と全く異なる様相を呈しているなど、古い歴史知識を持っている人には新たな発見が山盛りとなっている。

 

真田昌幸 徳川、北条、上杉、羽柴と渡り合い大名にのぼりつめた戦略の全貌(黒田基樹)

 こちらは、真田昌幸の上野国に対する経略と北条氏邦との対峙を軸として、主に武田氏滅亡後の立ち回りを中心に語られている。著者は大河ドラマ「真田丸」の時代考証を担当しているが、もともと関東戦国史や、比較的小規模な地方領主「国衆」の研究に関する造詣が深いこともあり、一味違うスポットの当て方で叙述が展開されている。