ポケモンユナイト番外編:PvE脳とPvP脳

 生まれてこのかたPvEばかりで、PvP専用のゲームには全く手を出さずに来た人間が、ポケモンユナイト(MOBA)という対戦しかコンテンツが存在しないタイプのゲームをしばらくプレイしてみて、感じたことをまとめてみるテスト。PvE、PvPそれぞれにおいて強い傾向性を持つ脳の使い方の特徴を洗い出し、それぞれ比較してみます。一応付記しておくと、PvPとは対戦、対人ゲームのことを指し(対AIですら対戦相手の中身が人間ではないだけにすぎない)、PvEは対称性の高い対戦相手を持たず、「攻略」を行うタイプのゲームであると簡単に定義しておきましょうか。


PvE脳
1.敵の動きを「見て」から行動する
2.敵のパターンを「覚えて」対処する
3.行動の結果を「計算して」予測する
PvP脳
1.敵の動きを「想定して」事前に行動を打つ
2.敵のパターンをいくつかの可能性の中から「推測して」対処する
3.行動の結果を「推察して」予測する

●PvE脳について
 PvEのアクション要素やRPG要素のあるゲームでは、基本的に敵の行動を「見て」事後での対処を行うか、または決まったパターンがある場合はそれを頭に入れた状態で対処することが多くなります。この2種類を混ぜた「事前モーションがあるけど発生がランダムな一連のパターン」というものもありますよね。

 こうした判断を積み重ね、致命的な失策(プレイヤーキャラの死亡など)を犯さない状態を担保したうえで適正なリスクを背負いつつ効率を高める、というプレイが基本になると思います。これに関しては、アクションゲームでノーダメージプレイを行う場合には少し条件が異なりますが、その場合ですら「これくらいなら攻めても被弾しないだろう」というリスク判断になるので、基本的には死亡リスクの判断と脳の働き自体は同じであると考えます。

 シミュレーションゲームに関しては、「AIのパターンを解析する」というプレイスタイルの人もいると思いますが、それを含めても一種の「パターン把握」と「見てから対処」に属するため、脳の働きに関しては同様だと思います。

 PvE脳の使い方に関しては、下の動画などがその典型例だと思っています(敢えて最も早いタイムアタック動画ではなく、適正な強さで挑んだ動画をセレクトしています)。

●敵の攻撃パターンを把握し、被弾しすぎない位置取りを心掛ける
●敵の事前モーションを見て次の行動を判断する
●パターンの条件(この場合敵のHP)を把握して事前に対処する
●これくらいなら被弾しても大丈夫、というゾーンを把握しておく
●上記の把握から、効率よくダメージを与えられるタイミングを模索する

 このプレイを行う際の脳内思考は例えばこんなところでしょうか。正直私はPvEばかりをプレイしてきた人間なので、無意識のうちにこれらの判断を行っています。しかしPvP系のゲームまたは全く別ジャンルのゲームばかりに慣れている人や、そもそもゲーム自体に慣れていない人は、PvEに慣れている人にとって「当たり前」であるこれ以前の判断もなかなかできないという事例は頻繁に見受けられます。

 例えば、アラド戦記で決闘はうまいのに狩りはどうしても苦手、という人がかつて多々いました。別に非難しているわけではなく(私は逆にPvPに慣れていませんからね)、頭の使い方が全く異なるために、「無意識に習慣化された思考」と、「意識してもどう頭を使えば良いかすらわからない思考」の対極性をが露骨に出てしまうのが人間の脳ということなのです。

 全体的なPvE脳的思考の特徴としては、計算的、規定ルート的で、イレギュラー性を薄くしていくところに重点が置かれている点でしょうか。この点、基本的に番狂わせが日常茶飯事であるPvPとはきわめて対照的に思えます。詰将棋的感覚とでもいえるでしょう。

 

 

 

●PvP脳について
 PvPというかMOBAで感じたことは、敵の動きを見てからの対処では優位の取り方に限界があるように感じられました。これはアラド戦記の決闘を少し触った時にも感じたことではありましたが、いくつかの選択肢を考えた上で、「この手をとってくるかもしれない」と事前判断をしたうえで先手の動きを取らなければならない場合が多くなってきます。

 これらは当たり前のことなのですが、実際にリアルタイム性と刹那性(瞬間の動きが勝敗を決する度合い)の高い対人ゲームをプレイした時に、こうした形で先を読む脳の使い方というのは、ある程度訓練されていなければ脳のポテンシャルに比してわずかにしか働かないということを感じています。

 そしてこうした思考は、ただ長時間、長期間プレイすれば自然と身につくというものではなく、あるいは色々なゲームを、セオリーを勉強しつつしっかりプレイしたり、あるいは色々な人との意見交換や交流、情報収集を経てこそ身につくものであると思われるのです。

 PvEでもそうした傾向はもちろんあるのですが、PvPに関しては環境やメタが常に変化していく前提があります。そしてプレイヤーたちはその変化に追いついていかなければ、それまでのポテンシャルすら維持できなくなるという点が大きな違いだと思います。

 たとえそれが最も効率的な方法ではなくても、セオリーやメタとして広まっていればそれが主流になるので、その内容を理解していなければ事前対処できないということです。戦争において愚かな敵将の動きは理性的でないために逆に迷惑で、互いに損害を大きくしやすい、みたいな現象に相通じるものがあると思います。相手の動きの可能性を把握しておくということの重要性は、その適切さとは無関係であるということです。

 さらに言えば、セオリーやメタとして広まっている時点でその方法論は既に最新のものではない、ということも挙げられます。特に現在ではプロゲーマーとして活躍しているプレイヤーすら多々いる世の中です。そうした人々は一般の人々よりも膨大な時間をゲームでの切磋琢磨や検証に費やし、常に新しい可能性を模索しています。そういった人々が敢えて広めるような情報というのは、対戦相手にバレても大きな痛手のないものか、あるいはすでに使い古したものである可能性が大きいということです。

 そのため、PvPのプレイヤーは情報収集におけるコネや人脈、または持っている情報源の質によって階層構造が生まれてくるわけです。これはゲームプレイのセンスとは全く異なる次元になります。そうした意味でもPvP界隈というのはゲームジャンルの中でも非常に独特な社会であると個人的には認識しているわけです。というか、ある意味では現実社会に最も近似している、というべきでしょうか。

 

ジャンルにおけるPvP脳の比重の差
 こうしたPvP脳の影響が大きいのは、MOBAやFPS、格闘ゲームやバトロワなどの刹那的判断を有するものではないかと思います(FPS以下は全くプレイしていないのであくまで推測ですが)。特にMOBAに関しては反射神経等の個人能力で対処できる要素が極めて少ないため、最もPvP脳を必要とするゲームなのではないかと思いました。FPSなどは、極まれにセオリー度外視で異常な反射神経、操作能力だけで勝ちあがる強者とか存在するようですからね…(知人の話)。

 一方、シミュレーションゲーム等のマクロ的判断能力の比重が高いジャンルは、比較的こうした要素が薄いと思われます。一瞬一瞬の判断で展開の行方が決まってしまうような刹那性はRTSですら滅多に存在しませんし、索敵範囲内における敵の動きが見えた上での対処は可能ですからね。戦略上の配置の失敗なんてものもマクロ的判断で対応可能です。

 となると、MOBAに関しても、マップ全体での配置というマクロ的観点ではPvP脳的発想はそこまで必要としないことが分かります。ただ違うのは、目の前の戦闘をPvP脳的判断の上で進めておきながら、マクロ的判断も同時に考えておく必要があるという点でしょう。MOBAは索敵範囲が非常に狭い上にユニット数が少なく固定されているため、なおさらそれに拍車をかけています(想像力で補うべき範囲が広い)。これに関しては目の前の戦闘におけるPvP脳の判断を無意識に行えるレベルになっていないとつらいと思います。

 なので、やはりMOBAというジャンル自体は最もPvP脳の使い方を要するジャンルである、という結論自体は動かないものとなります。さらに言えば、MOBAの場合は相手チームだけでなく味方プレイヤーの動きも想像しなければならないので、そういう意味でもPvP脳を鍛えていなければアドリブ力に限界が生じるという側面もありますね。この限界が、「こう動くべき」「なんで正しく動かないのか」という固定観念に縛られるプレイヤーの「ティルト」による非協力的プレイを招く原因にもなっています。

 そういう意味では、ポケモンユナイトのマップの狭さ、スタート地点からのジャンプ台の存在などは、MOBAの勝敗を極めてミクロな方向に偏らせているものであると言えるところはあります。どれだけ試合を作れていてもサンダーを相手チームに取られたら高確率で負けてしまう、という要素もそれに拍車をかけています。そうしたところでLoLなどよりもっとミクロに寄ったMOBAであると分類することはできるでしょう。

 個人的にはポケモンが持つブリンクスキルやそれに類似した移動タイプのスキルの多さもバランス的に奇妙に感じるところはありますが、これに関しては他のMOBAをやりこんだわけではないので感覚的な話にとどめます。

 

その他のジャンル
 そういえば、対戦ゲームとしてはパワプロのようなスポーツゲームもありますね。スポーツ系のジャンルはあくまで現実のスポーツのセオリーをベースに構成されているので、そのスポーツに関する知見とゲームに関する知見を合わせた知識というものがベースになると思います。なので、スポーツそのものに関する知見はPvPゲームほどスパンの短い変化が生まれるものではありませんし、ゲームの知識に関しても対戦中における判断に影響するものが大きく変化することは稀でしょう。また、「考慮すべき選択肢の多さ、広さ」や「当たり判定等の刹那的に推測すべき要素の多さ」という点はPvPならではといったところですね。要はアクション系のゲームとは異なるという意味合いです。そもそもスポーツは身体能力をベースとする競技なので、そうしたものが選手能力に依存するのも当然のことなのですが。

 また、野球における投球やバッティング、サッカーにおけるその時々の判断などは刹那的判断と呼べないこともないですが、これもスポーツの基本的な知識やスタンスに根差すものであるので、前述のPvP脳を要するゲームとして挙げたものとは一線を画すると考えられます。サッカーの方は、全体の動きの類似性から、野球と比べると比較的PvPゲームに近いと言えないこともないですけど、思考のスパンの違いなど、やはりPvPゲームとは一線を画すものであるという認識には違いはありません。

 

 一方、囲碁や将棋といった盤上の対戦競技に関しては、「相手の行動について先の先を読んでいく」という点においてはPvP脳よりはるかに長期的な「読み」を必要とするジャンルとなります。その代わり、刹那的な判断は基本的に不必要で、長考の際の制限時間にさえ注意すれば対戦相手は待ってくれるので、全くもって正反対の特徴を有することになります。これはシミュレーションゲームとPvPゲームの差にも似たところはありますが、それをもっと徹底的に突き詰めたような感がありますね。シミュはそこまで長期的な未来を読めるほど定量的な動きではありませんし、またRTSに限っては悠長に考えすぎたら一方的に負けてしまいますからね。そして数十手も先を読むという思考は、他のどのジャンルにも当てはまらない脳の使い方であると言えます。一体どんな思考法なのでしょうね。想像がつきません。


 ということで、ポケモンユナイトを1か月プレイした上で諸々を考察して思ったことは、PvPゲームはやっぱり沼ということです。本当にキリがないですね。リリース後のアップデートも数回に過ぎないのに、そのうちに変化のあったセオリーやメタの多い事多い事。プロと呼ばれる人々が出てくるのもうなずけますし、一生特定の対戦ゲームばかりやってるように見える人が珍しくもないこともそういう点が大きいのでしょう。プロほどやりこまなくても、本人の個人的な楽しみとして遊ぶには最も息の長いゲームなのだとは思います。ただし情報収集を含めてとんでもない時間泥棒だとは思いますが。

 とりあえず、こうした分類を行うとき、政略、戦略、戦術、戦闘という俯瞰度は沸けて考えた方が良いということは付記しておきます。そして今回のPvE脳とPvP脳の主眼は先頭というミクロな視点のボリュームが大きいということができます。刹那的な意味も含めて。

 まだまだ考えれば述べられることも色々あるような気はしますが、文字を重ねれば重ねるほどまとまりのない文章になってしまいそうなので、この辺にしておこうと思います。