アラド戦記:強職と弱職の差をどう見るか~キャラクターバランス論(コメント企画)

 たとえMOであっても、むしろほとんどの職業がディーラーの役割を果たすMOだからこそ、職格差はどうしても気になってしまう人は多いと思います。そんなジャンルの質問に今回はお答えします。


今回お答えする質問

Q1.2022年2月現在、日本サーバーで最強キャラクターブレイドと
   最弱キャラクターパラディン・阿修羅・ヒットマン間で
   火力係数格差が約30%ある事について。

Q2.テクニカルなキャラクターには高い火力係数を設定し、
   回復や速度バフを所有し扱いが容易な火力キャラクターは
   火力係数抑え目というデザインは公平なのか問題。

Q3.人口が多いキャラクターはバランシングパッチで
   必ず救済されるという漠然としたユーザー間にある認識の事実検証。

 

1.職の強弱とは?

Q.2022年2月現在、日本サーバーで最強キャラクターブレイドと
  最弱キャラクターパラディン・阿修羅・ヒットマン間で
  火力係数格差が約30%ある事について。

A.サンドバッグをメタとする現環境においては批判も合理的
  しかしメタそのものが今後変わる可能性も出てきている。

 この件に関しては「サンドバッグのダメージが高い職が強い」というレイドメタと、「サンドバッグのみによって職業が評価されがち」なイメージという2つの問題から生じている意見であることが前提として読み取れます。

 そして、サンドバッグ数値というのは極めて明瞭であるがゆえに回避しづらい評価指標であることはまた現実と言えます。シナジー撤廃によってその傾向性はより一層強まりました。したがって、現環境において単純なダメージ差が職ごとに何割も異なるのは、ゲームデザインとしての合理性が高いとは言えないのは事実だと考えられます。

 

 一方、ロールプレイングゲームにおいて、キャラクターの評価が一元的なメタに則ったダメージ係数に依存するというのも珍妙な話といえます。これに関しては、私が「ネトゲのソシャゲ化」と評価している風潮に根差している側面もあるので、時代的にやむを得ないものもありますが。

 例えばアントン時代であれば火力のほかに多様性のあるバフorデバフ、拘束能力、足止め能力、特定のギミックに対する優遇処理など多様なメタによって編成の幅が広く持たれていました。他にもレクイエムダンジョンがエンドコンテンツであった時代では、対集団を意識した殲滅力や制圧力、集敵能力や生存力、そしてギミック対応力などが総合的に判断されていました。

 要は、現環境のメタがサンドバッグ(対単体の短時ダメージスコア)に偏っていることがそもそもの問題であるという捉え方はできるわけです。DNFの新ディレクターがサンドバッグ至上主義を非常に嫌っているようですので、今後のダンジョンで対単体へのダメージを除いた有利不利をうまく調整できるなら「サンドバッグ係数が劣っていても」問題ない時代が来る可能性もある、ということですね。

 

結論
1.サンドバッグがメタという前提では全く非合理的。
⇒ダメージこそ強さであるのに、なし崩しに重大な格差が生じている。

2.RPGではそもそも多様なメタが存在する方が自然。
⇒基本無料ゲームの課金形態の変遷による弊害。
⇒対単体の短時ダメージ係数のみが判断基準という方が異常。

3.110レベルキャップでは変化の可能性もある。
⇒サンドバッグ至上主義を嫌うディレクター。
⇒アントン以前のダンジョンでは全く異なるメタが一般的であった。

 

 

 

2.キャラクター性能について

Q.テクニカルなキャラクターには高い火力係数を設定し、
  回復や速度バフを所有し扱いが容易な火力キャラクターは
  火力係数抑え目というデザインは公平なのか問題。

A.ロールという観点からは適切。しかしサンドバッグ環境において
  果たしてそのメリットは本当にメリットと呼べるのか? という問いかけが必要。

Ⅰ.ロール(役割)について
 ロールプレイングゲーム、特にMMOにおいては従来、盾役(タンク)、火力(ダメージディーラー)、回復(ヒーラー)、補助(バフorデバフ)といったロール(役割)が設定され、ディーラー以外も攻撃性能自体は有していても、あくまで劣るものであるという設計が定番のものでした(もちろん例外はありますが)。

 その観点からすれば、回復や速度バフを所有しているキャラクターの係数が劣るというのは、RPGにおけるごく自然的な発想であると言えます。

 しかしアラド戦記はRPGであるとともにアクションゲームであること、現環境における「評価」がサンドバッグダメージに特化して行われやすいことから「本当にそれはトレードオフに値するメリットとして数えるべき案件なのか?」という疑問というかむしろ批判を持つプレイヤーもいることは想像に難くないといえます。

 実際のところ上記のようなユーティリティスキルが役に立つ場面もないわけではないんですけどね。しかし力こそパワーと言わんばかりにどんなボスでも集中砲火で短時間撃破するのが最大のメタとなってしまっている以上、そのような評価が出てしまうのもやむを得ない事でしょう。

 

結論
1.異なるメリット同士のトレードオフはRPGとしては適切。
⇒ロールプレイによる役割分担。
⇒ヒーラーや補助役がディーラーより強いと逆に不自然。

2.ダメージ係数至上主義においては、「本当にメリットなのか」が微妙。
⇒味方のユーティリティを上げても評価されない場合がある。
⇒最大ダメージを出して1秒でも早く倒すのが適切である環境の弊害。
⇒サンドバッグダメージのみ「明確にわかり易い指標」であることも影響。

 

Ⅱ.操作難易度に対する恩恵について
 操作難易度が高いキャラクターに対するダメージ係数の優遇に関しては、2つの肯定的な評価が考えられます。1つはダメージの理想値と現実的な期待値の乖離が他職より大きいと想定できることです。おそらくエルブンナイトやシャドウダンサーなどを想定したご質問だとは思われますが、例えばエルブンで理想火力を出せるかどうかという件に関しては、敵によってはどんなに上手く立ち回っても不可能である場合があります。

 極端な過程を示すと、敵ネームドがある一定地点に留まる時間が仮に最大2秒程度であった場合、真覚醒前のエルブンだと最大火力を発揮する可能性は完全に0%でした。チェーンラッシュコンボを蓄積する間に逃げられるからです。仕様上の不可能なのでプレイヤースキルは一切関係ありません。今では多少緩和されましたが、やはり火力を適切に出すにはせめて5秒ほど同じ場所にとどまってほしいというのは確かです。

 そういった場合、仮にその職業が下位レベルの火力であったとしたら、キャラクタースペックが十分であるのにダンジョン攻略難易度が不当に高い状態に陥ります。そうなると「クリア至上主義」のレイド環境では職自体が忌避されてしまうリスクが高いと言えます。実際エルブンナイトはDNFにおいて、イシスレイドでどんなに強くても緑パーティに配置されてしまうという不遇を受けていたそうです(ナムウィキより)もし仮にキャラクターが別の職業に転職出来たり、装備を別キャラクターに遷せたりするゲームでは適職を出撃させることこそが正解となりますが、アラド戦記はそういうゲームではありません

 日本ではインフレ度合いが激しかったので職差別までは至りませんでしたけどね。でも思い出してください。異界時代初期にはある程度のテンプレ構成以外の野良参加はハードルが高かったことを。4倍ルーク時代の人選が「真ん中装備」と呼ばれる職業による判断が最優先に近い状態であったことを

 そういった事案から鑑みるに、テクニカルなキャラクターの最大スペックを一般的なキャラクターより高く設定しておくことは、1つの合理的判断であると考えることができます。

 

 2つ目の肯定的前提は、大半のプレイヤーがキャラクターのポテンシャルを100%活かしきることは不可能、という前提のもとに高めの係数を設定し、もし技術の高いプレイヤーがそれを発揮しきれた場合、ご褒美的に上位の火力を獲得出来るというゲームデザインは、特にアクションゲームにおいてはエンターテインメント性を向上する要素の1つだと言えることです。

 ピーキーなキャラクターという表現も存在するように、万能なキャラクターより、不器用だけど突出した「何か」を持つキャラクターに魅力を持つプレイヤーも一定数は存在しています(どうでも良い話ですが、私はピーキーなキャラと共に、いろいろできるけど器用貧乏なキャラも好きです。後者も1つの尖り方なので)。そんな中で、全キャラクターが平等でどの職を使っても見た目しか変わらないという状態であれば、ゲーム自体が面白くないと感じて離脱するプレイヤーも存在し得るということです。実際私も95レベルキャップでは、稼働キャラ数をフレンドとの付き合いを保つ最小限の数まで低下させていた過去があります。

 

 さて、操作難易度と比例して性能を上げる見解に否定的な見方をするとすれば、「平等ではない」これに尽きるのでしょうかね。しかし全キャラクターを同じ性能にしたいならば、操作難易度やギミック適正、攻撃範囲や拘束性能、チャネリングの長さなどもすべて調整しないと本当に平等とは言えません。果たして見てくれの数字だけを弄って平等に見せかける事で万人が満足するのかどうか、という点に関しては何とも言えないところです。

 もちろん極端な格差があるからこそ不満が出ているという現実もありますけどね。とはいえその満の矛先の多くは、取り立ててリスクがないのに強すぎるキャラクター、取り立ててメリットがないのに弱すぎるキャラクターの2種類に対するものではないかと個人的には思います

 

結論
1.理論値が期待できない職業の期待値を上げるのは一面で合理的。
⇒ダメージ係数がそのままレイド難易度に直結する仕様の影響も若干ある。
⇒どれだけ鍛えても活躍を期待されない職業が存在するのは理不尽ともいえる。
⇒過去に職差別が実際に存在したという点もポイント。
⇒技術こそすべてであるなら多少は差っ引いて考えることもできるが。

2.上手くなればご褒美的に高性能を得られるのはエンタメとしてあり。
⇒ピーキーなキャラクラ―を使いこなすことに魅力を感じる層は存在する。
⇒アクションゲームなので操作を楽しみたいプレイヤーの割合は比較的高いと思われる。

3.平等ではないといえば確かにそう。
⇒しかし本当に平等にするなら他にも修正すべき格差がたくさん出てくる。
⇒「違い」を楽しみたいプレイヤーも存在する。
⇒結局はトータルでみたバランスが大切ということ。

 

 

3.職人口の影響

Q.人口が多いキャラクターはバランシングパッチで
  必ず救済されるという漠然としたユーザー間にある認識の事実検証。

A.どちらかというと「人口が少ないキャラクターは放置される」方が根強い。

 この問題に対する最大の反証は、韓国で最大人口を誇る女クルセイダーのバフ力がバッファー中最も低いことであると思います。ユーティリティとのトレードオフという概念を適切だと考えた場合も、割と明確に性能差が存在している現実がありますからね。

 他に剣鬼や女ネンマスター、ソードマスターなどの職業も韓国で比較的高い人口割合を占めているようですが、100レベルキャップ最終バランシングの段階では優遇されているとはとても言えないと思います。もちろん「強い時代もあった」のは確かですけどね。

 他に、中国で人気の職が強い可能性なども聞いたりしますが、例えばバーサーカーは常に「確定したメタに対して遅れて強化される」ことを繰り返していたイメージがあります(あくまで過去の話)。確かに強化頻度は高いのだけれど、圧倒的最強職であった時期はどちらかというとレアな部類に属しているイメージ。もちろん武侠キャラであったバガボンドの天下が長く続いたのも確かなので、影響が無いとは言い切れないけどごり押しと断言するにはやや不足感があります。

 

 逆に、人口が少ないキャラクターはバランシングの対象として認知されないことがあるというのは割とありがちです。近年のDNFではそういう職業にスポットを当てたバランシングも行われているため、エルブンナイトが「難しいのに弱い」という謎の状態から脱出するなどの変化も起きていますが、フィンドウォー時代から何年もの間「ほとんど放置」といえる状況だったのも事実です。ラインゲームでは過疎職が存在を忘れられる事案は割とありがちです。ほんとありがちです。

 

結論
1.人口が多い職業が強くなりがちというには反証が多い。
⇒人口が多くても決して強くない職も複数ある。

2.ユーザーの声による影響が存在しないわけではない。
⇒強化される頻度の高さなどの偏りがある。
⇒ただし「開発の好み」など他要素も混じっていそう。

3.過疎職が存在を思い出してもらうには意識的な改革が必要。
⇒油断すると何年も放置される。

 


まとめ

●サンドバッグ至上主義がRPGとして異常なだけ。

 半分冗談ですが、すべての質問の根源がここにあることは確かです。

 

1.ダメージ係数が何にも勝る圧倒的指標である現在、
 一定の平等性が期待されてしかるべき状況であることは確か。
⇒明確な理由のないのにダメージ係数が何割も違うのは確かに不自然。

2.RPGとはロール(役割)を分担するゲームである以上、
 火力性能とそれ以外の要素とのトレードオフは本来ならば適切。
⇒ダメージ以外がなおざりにされるゲームバランスの方が奇妙。
⇒ユーティリティの有用性への認識が開発とプレイヤーでズレている。

3.アクションゲームなので操作性から得る楽しみがあることも必然的。
⇒難しいキャラクターを使いこなす達成感とご褒美はあって良いと思う。
⇒多様性のあるゲームに価値を感じる人もいる。
⇒とはいえ不平等が激しいのも良くないので結局はバランスが大切。

4.職業の強さと人口は必ずしも直結しない。
⇒人気だけどそこまで強くない事案は珍しくない。
⇒強化パッチの頻度など、多少の影響はあるかもしれない。
⇒逆に過疎職が存在を忘れられるのはネトゲではありがち。

※既存キャラの再転職や装備のアカウント内移動が不可能だからこその結論もある。

 万人が100点満点をつけるゲームなど存在し得ないことは以前から述べていますが、本来獲得できるはずの顧客を逃すのは失策であるのもまた確か。適度なバランスを保つことがオンラインゲーム開発者の取るべき道であるということは確かだと思います。

 

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