ゲームレビュー:英雄伝説 創の軌跡

 2021年8月末にswitch版が発売された創の軌跡(はじまりのきせき)。隙間時間で少しずつプレイしていましたが、半年越しでようやくクリアできました。3人目の主人公は未プレイだと正体不明なので名前を消しています。というわけで、当ゲームの個人的主観によるレビューをまとめてみます。

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簡単な結論
●RPGゲームとしては十分お勧めできる出来。
●ストーリーも戦闘も一般的な基準からするとクオリティの高い方。
●軌跡シリーズとしては79点、一般RPGとしては85点。

プレイの前提
 この項ではシリーズ作品であるが故の前提を話します。なので単品ゲームとして面白いかどうかだけに興味があるならスルーしてかまいません。

私のシリーズプレイ暦
●空の軌跡 FC
●空の軌跡 SC
●空の軌跡 the 3rd
●零の軌跡

 創の軌跡はいわゆる「軌跡シリーズ」の続編になるので、私が過去にプレイした作品も示しておきます。この後PS4などで作品が発売されていますが、ハードの問題などもありプレイしておりませんでした。

 なお、「白き魔女」、「朱紅い雫」、「海の檻歌」もプレイ済みですが、「英雄伝説-ガガーブトリロジー」という別シリーズのためこちらは今回の話に影響ありません。

 空の軌跡(リベール王国編)零&碧の軌跡(クロスベル自治州編)閃の軌跡4作(エレボニア帝国編)と舞台を変えて行われた作品群の1つの集大成が創の軌跡といえます。なお、この後新シリーズの黎の軌跡(カルバード共和国編)もPS4で発売されています(switch等はまだ)。また、別枠でオンライン(ブラウザゲーム&ソーシャルゲーム)として暁の軌跡もリリースされています。

 要は、創の軌跡は軌跡シリーズにおける1つの締めであり、なおかつ次の展開の「はじまり」を予兆させる作品であるといえます。では、軌跡シリーズ全体の魅力について軽く触れておきましょう。

軌跡シリーズの魅力
1.重厚なストーリーと個性的なキャラクター
2.工夫を楽しめる戦闘
3.上記を両立させる細かい作り込み

1.重厚なストーリーと個性的なキャラクター
 最近の軌跡シリーズは「ストーリーRPG」と銘打っているようです。RPGなんだからストーリーは存在して当たり前と思うでしょうが、それだけストーリーの面白さを売りにしているということですね。

 実際、緻密な世界観や設定、キャラクター構築などをベースに作り上げたストーリーは、これだけで小説や漫画、アニメにしても十分通用する内容だと個人的には思うレベルです。実際にメディアミックス作品も発売されているようですが、そちらの質に関しては現物を知らないのでノーコメントで。

 これは個人的な主観ですが、軌跡シリーズはSF的な設定を利用してファンタジー世界を表現している作品だと思っています。例えば、アーツ(導力魔法)と呼ばれる魔法も不思議な力によるものではなく、戦術オーブメントという装置を用いて発動させることになっています。

 このように、ゲームシステムと世界観が直接リンクしているため、RPG的なお約束に頼らずにリアリティのあるストーリーを構築している点は大きな魅力です。ただし後述しますが、次第にファンタジー的な概念を用いた表現も増えてきていますけどね。

 登場キャラクターたちも多彩で、彼らの設定とそのやりとりも魅力的といえます(好みはあると思いますが)。特に今作は旧作のキャラクターが勢ぞろい(全員が仲間になるわけではない)なので、旧作すべてをプレイした人にとってはご褒美作ともいえるかもしれませんね。

 あとはサブシナリオですら細かい設定や描写が多くて、全部見たいという欲求にかられやすいのも本作の特徴でしょうかね。旧作では過去にクリアしたエリアの街にもどってサブシナリオが発生しないか頻繁にチェックする必要があったのですが、今作はそういうことはありませんでした。

 

2.工夫を楽しめる戦闘
 戦闘はターン制バトルですが、敵味方の行動順を表示したうえで工夫をして戦う、戦術性の高いバトルになっています。敵の魔法詠唱をキャンセルしたり、遅延やブレイクによって行動を阻害したりすることによって「ずっと味方のターン」とまでは行かなくても、如何に敵の行動を封じて一方的なバトルを展開できるか模索する楽しみは大きなものです。もちろん、強敵相手の場合は如何に戦線維持しながら撃破するか、という楽しみ方も存在します

 また先述したアーツについても、オーブメントに装着するクオーツ(結晶回路)の組み合わせによって、使えるアーツやキャラクターのステータスが変化するため、キャラクターの性能をプレイヤーの好みに合わせて調整できるのも楽しみの1つと言えるでしょう。

 

3.上記を両立させる細かい作り込み
 軌跡シリーズを完成度の高いものに仕立てあげているのは何より、上記2つの要素が違和感なく統一された世界観の上に成り立っていることだと思います。またUI等の操作性に関しても基本的に粗の少ないつくりであるため、複雑なシステムの割にはストレスなく操作できていると思います。要は完成度が高いってことですね。

 

レビュー:ストーリー
1.全体の雑感
 では創の軌跡単品についてのレビューに入っていきます。全体的なストーリーに関しては、おおむね軌跡らしい面白さは健在だと思いました。クロスベル自治州の再独立に際して発生した巨大な陰謀を、3人の主人公を軸としてどのように解決していくか、という絶望から一縷の希望を見出していく流れはそれなりに見ごたえがあったと思います。

 細かいことを言いすぎるとストーリーの本質に触れてしまうのであまり説明できませんが、それぞれのキャラクターが活動したり、他の人物とのやり取りを行ったりしていく中で、何か大切な「気づき」を得て成長していく過程など、細かい描写も魅力的と言えます。人間の根幹を突く「金言」、要は素晴らしい言葉もふんだんに盛り込まれています。少なくとも、エンディングまで見て良かったとは思いました

 過去作品のオールスターゲームみたいなものなので、キャラ同士のやり取りも非常に豊富です。関係性のあるキャラクター同士を戦闘に同時参戦させて「Link」をつなげたときには固有のやりとりもあります。少々気になる点といえば、キャラクターの恋愛感情を匂わせる描写がちょっと目につきすぎると感じた点はありますが、この辺は人によりけりかもしれません。

 

2.シナリオ進行は単純
 初期の軌跡シリーズではフィールドマップをある程度自由に冒険する一般的なRPGの形式をとっていましたが、今作はほぼほぼ1本道の進行となっています。舞台が2つの国にまたがる広さであること、敵の占領下にある地域での活動も多いことから、現在地から別の地域へ移動することは基本的に不可能です。

 良く言えば迷わず進めやすい、悪く言えば自由度は控えめということになるでしょう。サブシナリオもわざわざ前の街に戻って探すこと自体が不可能なので、指定されたエリア内をきちんと探索すれば取りこぼしは無いと思われます。今作のシナリオの性質上避けられない仕様といえるでしょうけど、初期作を知っている身からすると多少違和感があるかもしれません。

 ギルドから依頼を受けて任務を果たす、みたいな要素もなくなっているため、本当にストーリーを追っていくタイプのRPGとなっています。しらみつぶしに探す手間はなくなった代りに、冒険感は薄れたという感じですね。時間のない社会人にはお手軽といえそう。とはいってもクリアまでのボリュームは大きいですが、

 なお、この先に進むとボスだから準備しとこうとか、この先に進むと今のシナリオが終わるとか、利便性に基づいたシナリオ予告は異様に親切です。

 

3.強まったファンタジー要素
 軌跡シリーズの特徴の項で、SF的な設定を用いてファンタジー世界を表現している作品だと思っていると述べました。今作も基本的にはこの系譜をたどっていますが、どうやらシリーズが進行するごとに「人知の及ばない力」が影響を及ぼしてくる傾向性が強まっているようです。これに関してはどちらが正しいともいえないですが、個人的にリアリティが薄まったのは少し残念かなと思います。

 しかし、ファンタジー要素が強まったがゆえに、今作のストーリーの根幹(影の主人公ともいえる)となるキャラクターの魅力が強まっているという点もあるので、すべてを一緒くたに語ることはできないんですけどね。

 これは、あくまで軌跡シリーズに対する期待値の高さゆえに生じた感想なので、単なるRPGとしてはまだ違和感の少ない方なんじゃないかと思います。

 

レビュー:戦闘システム
1.簡易化が進んだオーブメント
 軌跡シリーズにおける魔法「アーツ」は、オーブメントという装置にクオーツというアイテムをはめ込み、その組み合わせにより発動させることができるとシリーズ解説の項で述べました。これに関しては、空~零とくらべると極端に簡易化されています。要は、初心者でもとっつきやすくなっているということです。

 旧作では、各クオーツに含まれる属性値の合計によって使えるアーツが決まるというシステムでしたが(テイルズオブエターニアのシステムを複雑にしたようなものか)、今作では1つのクオーツで1つのアーツが発動できるようになる(あるいはアーツが増えない)システムになっているって感じです。

 個人的には旧作のスタンスがかなり好きだったんですが、今のシステムの方が明確にわかりやすいのも事実なのでどちらが正解ともいえません。というか万人向けなら今回の方が適切かも。

 なお話は少しずれますが、仲間が多すぎるためにメニュー画面のユーティリティが若干悪くなっているのは数少ない粗かなと思います。装備orオーブメント設定を行う際に、LRキーで目当てのキャラクターの枠まで移動する必要があるのはちょっと不便。本来は適切なシステムなのですが人数が多すぎて…。

 

2.「洗練」された感じの戦闘
 空の軌跡ではクロノドライブ+クロノブレイク+遅延つき攻撃でしばらく味方のターンって感じがありましたが、今作はボスに限っては割と無理やり割り込んで来ようとする傾向がありますね。まあRPGとしてはこちらの方が適切でしょうか。ただ、ボスも相手によっては上手くブレイクを重ねると「めったに行動させない」ことができる例もあります。こういった工夫をどう評価するかは好みでしょうね。

 ノーマル難易度で戦った感想としては、全滅リスクは低く難易度は控えめですが、それなりに手ごたえのある敵も存在したといった感じでしょうか。もっと高難易度に設定することもできますし、戦闘そのものを楽しむことはできると思います。雑魚戦で敵に行動させないまま全滅させる方法を工夫するが好きなシリーズなので、それが維持できていた点は良かったかな。

 初期作にはなかった(未プレイ作品で追加されたものが多い)、「BP」を消費して味方全体にバフをかける「オーダー」や味方同士の連携(追撃)、パーティ全体で攻撃しつつバフをかける「ヴァリアントレイジ」なども戦闘にメリハリをつけるという意味では悪くなかったと思います。

 特にオーダーを駆使すると戦闘展開が極端に変わりますし、パーティの継戦能力も大幅に向上しました。ダンジョン道中で回復アイテムに頼ったり、休憩しに戻ったりという手間も省けた印象があります。

 

3.クラフトとアーツのバランス
 正直、ストーリー終盤に差し掛かるまではアーツに頼ることがほとんどありませんでした。何しろオーダーで特化しないと詠唱が地味に長く、クラフト(一般RPGでいう「攻撃スキル」)で手っ取り早く行動しつつオーダーでCPを回復したほうが明らかに展開が早いと思えたからです。

 またストーリーの途中ではパーティ編成も固定されているため、アーツが得意なメンバーをそろえるということができない=クラフトが得意なメンバーに合わせた方が速いと思ったという側面もありました。そのため、ちょっと物理魔法のバランスが悪いかなーと最初は思っていました。

 しかし終盤になってメンバーが増え、編成の幅も広がったところでアーツの強いメンバーをそろえてオーダーで特化してみたところ、ちょっとヤバいくらい強くてびっくりしました。強敵相手だとアーツの方が良いかも、と思ってラスボスもアーツ特化で挑んだところ、ボスに必殺技を撃たせることなく倒してしまいました。むしろラスボス前のイベント戦闘が一番大変だったかな? あまりネタバレするわけにもいきませんが。

 というわけで、雑魚相手にはクラフトで初手撃破が楽だし、ボス相手も機動力や行動阻害の面でクラフトが優遇に思えていましたがアーツは特化編成を組めば異常な火力を出せるため、何だかんだバランスとれてるのかな? と思いなおしました。

 

4.無限回廊について
 ストーリーが1本道かつ、他マップへの移動ができないことへの救済としては無限回廊の存在があります。要はレベリング、キャラ強化等のために存在している、どこからでも入れるダンジョンといって差し支えありません。最初はストーリー的に違和感を感じましたが、システム的に言えば便利といえるでしょうね。

 回廊ではサブシナリオの閲覧権も獲得でき、視聴を終えるとアイテムが手に入ったりもします。オマケ要素をことごとくこのエリアに詰め込んだ感じなので、ストーリーだけを楽しみたい人とオマケ要素も楽しみたい人のどちらも拾えるシステムという点ではアリだったのかなと。

 

 

過去作未プレイで楽しめるか
 さて、創の軌跡は数多くの過去作品をベースにしたゲームであるため、過去作未プレイの人にとってどうであるか個人的な感想を述べたいと思います。私も初期作しか知らないためリアルな感想です。

1.普通にプレイするには支障なし
 まず、ゲームを普通に勧め、シナリオを普通に楽しむ分には特段の支障はありませんでした。強いて言えば軌跡でポンというクイズゲームの解答が分かりませんでしたが、不正解時に答えが分かるので繰り返しやるなり検索するなりすれば良いでしょう。

 

2.ストーリーも大体は分かるが…
 過去作のストーリーが分からない状態でも、「現在」の話を追っていく過程ではきちんと説明されていますし、単純に楽しむには問題ありません

 ただし、キャラクターたちが過去の話をする場面がちらほらあるため、固有名詞等によって細かい経緯が分かりづらい場面はたまに出てきます。キャラ同士の関係性が構築された後の話でもあるため、特定のキャラクター同士がなぜそのようなやり取りをしているのかを推察するしかない場面というのもたま~に存在します

 そのような人のために過去のあらすじを読めるモードも搭載していますが、実際にゲームをプレイしている途中に活用しやすいかどうかは何ともいえないですね。本作をプレイしたうえで細かい内容が気になるなら、過去作もやるしかないって感じでしょうかね。

 

 結論は、本作単品でもリアルタイムのストーリーは十分楽しめる。でも過去の経緯を細かく理解したいなら過去作もやるしかない。という月並みな回答となります。単品のみでストーリーの背景すべてを把握することは難しいと思います。


まとめ
●ストーリー
1.お話を楽しむには十分な出来。
⇒新登場の主要キャラもしっかり魅せてくれました。
⇒キャラクターたちの「気づき」や成長と、それにまつわる「金言」も。
⇒SF的で緻密な世界観も健在だが、ファンタジー要素が強まった。
⇒細かい気になる点は無くもないが、おおむね好評。

2.ゲーム進行は1本道
⇒メインストーリーを追いかけていく形。
⇒迷わず進めやすい代わりに自由度は低め。
 しらみつぶしの捜索は不必要になったが、冒険って感じではない。
⇒サブシナリオは無限回廊などに。
⇒時間のない社会人には気楽かな。


●戦闘システム
1.簡易化されたオーブメント
⇒初心者でもわかりやすい。
⇒カスタマイズを悩む楽しみは減った。
⇒とはいえ自由度は健在。

2.「洗練」された戦闘
⇒相変わらず戦術性を楽しめる。
⇒シリーズ目線の難易度は控えめ。
⇒それなりに手ごたえのある敵もいるし、難易度を上げることも可能。
⇒雑魚をノーダメージで撃破する工夫も楽しい。


●過去作未プレイで楽しめるか
1.普通にプレイするのに支障はない。
⇒ゲーム単品として楽しむことは十分可能。

2.ストーリーも大体は分かるが…。
⇒少なくとも「現在」のストーリーは分かるようになっている。
⇒過去の話をするときに分かりづらい固有名詞がたまにある。
 過去作ストーリーのあらすじを読めるのでで補うことは可能。
⇒本作単品でも十分楽しめるが、
 細かいところまで理解したいなら過去作もやるしかない。


●個人的採点
1.「軌跡シリーズ」としては79点
⇒ギリギリ「優」にできない「良」

2.一般RPGとしては85点
⇒シリーズへの期待値の高さを省けば優秀な方。
⇒ストーリーも戦闘も十分楽しめる。

 とりあえず、RPGゲームとしては十分お勧めできる出来だと思います。ストーリーも戦闘も一般的な基準からするとクオリティの高い方といえます。軌跡シリーズに対する期待値の高さを加味すると「もうちょっと頑張れたかも」という気もしますが、シナリオ進行による縛りが大きかったのは確かでしょうね。どうでも良い話ですが、大学の卒論研究で、「本当は優をつけたいけど新発見になった要素が薄いから申し訳なく79点」と教授に言われたのを思い出しました。

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